だから、疲れの回復が一番、大事!

だから、疲れの回復が一番、大事!

前回、自律神経失調症を「疲れの総合症状(者)」と捉えることで、問題解決がスムーズになることを、お伝えしました。

漢方鍼灸では、その意味で、自律神経失調症の施術にあたり、疲れの回復を最も大事にしています。

 

このパートでは、漢方医学独特の、どうやって「疲れ」の回復をさせていくのか、そのアプローチ法をご紹介します。

新陳代謝は内臓と脳の往復運動

漢方医学には、「人間は自然の一部である」というのが発想が理論の根幹です。そこから、自然現象をモデル、カラダ内部で、どんな変化が起きているのか洞察していった積み重ねが理論になっていきました。

中でも、自然界に繰り広げられる「新陳代謝」こそ、疲れの回復、ひいては生命活動の働きそのものを見出している点です。

この「新陳代謝」とは、ざっくり言えば、

 

必要なものを内に入れ、不要なものを外に出し、絶えず古いものが新しいものに入れ替わっていくこと

 

です。この新陳代謝を、漢方用語では、「推陳致新(古きを押し出し、新しくなること)といいます。

 

たとえば、日の出、日の入り、これも推陳致新です。

また、生態系で繰り広げられる「食物連鎖」も、一つの推陳致新の姿です。

人体においても、同様のことが繰り広げられています。それは、「飲食物の出入り(摂取と排泄)」「呼吸活動による空気の出入り」などによって、細胞・組織が日々、生まれ変わります。

 

新陳代謝が行われるプロセスを簡略化すると、下の図のように「内臓(因)⇒血液循環・自律神経(縁)⇒脳(果)」が往復する運動として示せます。

胃腸の虚実のリズムが疲労回復のポイント

さて、新陳代謝の往復運動が起こるきっかけは、何かが「不足」している状況が必要です。

何かが「不足」している状況があるからこそ、その不足を埋め合わせるために「欲求」が生じます。この欲求によって、外から、その何かを取り入れるようとします。

そして、実際に、その何かを内に取り入れたら、次第に「充足」します。充足したら余計なものは、外に押し出します。

外に押し出したら、再び「不足」が生じる、この繰り返しが、新陳代謝の往復運動です。

人体において、最も、この「不足」と「充足」の往復運動をイメージしやすいのが、飲食の摂取です。お腹がすく、これが「虚」の状態です。そして、食べ物を食べてお腹がいっぱいになる、これが「実」の状態です。

 

お腹は、いつまでも「実」の状態だと苦しいので、大便や小便として、外に排泄していきます。私たちの体は、日々、「虚⇒実⇒虚⇒実⇒虚⇒実…」のリズムによって、体が日々生まれ変わる、これが新陳代謝のはたらきによるものです。

だから、新陳代謝の中心になる内臓は、胃腸。いわば、胃腸は新陳代謝の象徴です。

この胃腸のリズムは、現代医学的に表現すれば、胃腸の蠕動運動に相当します。

 

胃腸の「虚⇒実…」のリズムが、何らかの要因によって崩うことで、疲れが生じます。

つまり、本来の生理的な「虚実」のリズムが取れずに、「虚」か「実」か、どちらかに偏るときに病的な状態になります。

 

漢方医学では、虚実の考え方を応用し、エネルギーの不足した状態を「虚」、反対にエネルギーの充足から停滞した状態を「実」と表現して、症状が起きている体の状況を伺う判断基準にしています。

「虚⇒実」リズムを狂わせる要因は、飲食の不摂生という、直接、胃腸への負担以外にも、他からの影響によってももたらされます。それは、

 

●睡眠の質の低下
●過労
●精神的ストレス
●運動不足

 

などです。

 

疲れの回復で最も考えるべきことは、いかに生理的な胃腸の「虚⇒実…」のリズムに戻せるかに掛かっています。

漢方医学は「疲れ」をどのようにみていくのか?

さて、本来、生理的な胃腸のはたらきである「虚・実」を、病的な疲れの程度をみる物差し(指標)として応用したのが、漢方医学の偉大な智恵です。

その疲れの程度を見る、「虚実」の物差しについて、簡単にご紹介します。

気血水の虚実

これまで、単純に血液循環と説明してきましたが、漢方医学では、血管を流れる「血」を動かす動力として、「気」という概念を設定しています。

それに加えて、血液の液体成分にもなり、またときには、体の各組織を潤す液体として「水」という概念です。

漢方医学では、これら気血水を総称するエネルギーが、滞りなく流れていくことを重視しています。

 

エネルギー循環の不調として、エネルギー不足を「虚」、過剰(停滞)を「実」として、これに気・血・水3つのエネルギー循環と組み合わせることで、疲れの程度を推し量っていたのです。

それぞれに、次のような問題が挙げられます。

気虚(活動エネルギーの不足)

血虚(組織に栄養を与える血の不足)

陰虚(組織に潤い与える水の不足)

 

気滞(気の停滞)

瘀血(血の停滞)

湿痰(潤す用途をなさない水の停滞)

これら気血水の「虚実」が、生理的な胃腸の「虚⇒実」リズムを狂わせることで、一日の「疲れ」の回復度を遅らせていきます。

では、気血水の「虚実」は、何によって引き起こされるのか、次に説明する「内臓機能の不調」と大きく関わります。

よくみられる「内臓機能の不調」

胃腸の虚実リズムを狂わせる「内臓機能の不調」、つまり疲れが生じる要因は、主に肝臓、脾臓、腎臓の不調を起点とするものが、多くみられます。

漢方医学が認識する内臓機能の不調は、西洋医学的検査での、画像や数値に示されるものとは、全く異なります。

 

さて、これらの内臓機能の不調は、個々の内臓の場合もあれば、一つの内臓機能の不調が別の内臓機能の不調を引き起こすというような場合もあります。

三臓の関係性は、下の図のように、腎臓を土台にして、肝脾の2つの内臓が両端になって、互いにシーソーのように、生体内のバランスを維持しています。

 

肝・脾・腎の三臓は、それぞれの機能を果たしながら、互いに協力し合う関係を保ちながら、人間の生理・精神・行動などの様々な活動を支えています。

また、三臓は、次のような精神活動があるとされています。

 

腎臓は「目的・目標を定め、ものごとをやり遂げようとする精神 例)根気」

脾臓は「目的のために、あれこれ思慮する精神 例)智恵」

肝臓は「思慮したことを行動に移すための精神 例)勇気」

 

そのため、各臓の不調は、次のような精神面の不調として現れやすくなります。

 

・腎の機能低下=腎虚⇒根気が続かない

・脾の機能低下=脾気虚⇒思考力の低下

・肝の機能亢進=肝鬱気滞⇒常に過緊張

 

下の図は、肝の機能亢進が脾の機能低下をもたらして起こる下痢を簡易的に示したものです。

頑張り屋さんタイプの下痢症状

体内で繰り広げられる戦い~漢方的「免疫力」の考え方

体内で繰り広げられる戦い

私たちの体では、常に、邪気と正気の戦い「邪正闘争」が繰り広げられています。

「邪正闘争」は、体が異物を追い出そうとする姿を表現する、いわば、漢方医学の免疫理論です。そして、「邪正闘争」の状況が、「疲れ」とその延長にある病気・症状の行方に大きく関わります。

 

先述したように、「疲れ」の発生に関与する主な内臓は、主に肝・脾・腎の3つです。

どこの内臓で、この闘争が繰り広げられているか見極め、正気が邪気を外に追い出すことができれば、内臓やエネルギーの不調がカイゼンに向かいます。

それにより新陳代謝が本来の虚実リズムを取り戻せば、疲れも回復し、その結果として、自律神経系の各症状が緩和しやすくなります。

 

以上のような、新陳代謝の正常化によって疲労回復力を向上させていく、これが漢方鍼灸の自律神経症状の対応の仕方です。

今回のまとめ

疲労回復がなされるということは、体内で「新陳代謝」が行われています。新陳代謝とは、必要なものを内に入れ、不要なものを外に出し、絶えず古いものが新しいものに入れ替わっていくことです。

この新陳代謝には虚実のリズムがあります。

「虚」とはエネルギーの不足、「実」とはエネルギーの充足。

内臓のはたらきの中で、新陳代謝の象徴である、「胃腸の生理的な虚実のリズム」が、疲労回復と大きく関わります。

胃腸の虚実のリズムが崩れる要因には、主に、

 

●飲食の不摂生
●睡眠の質の低下
●過労
●精神的ストレス
●運動不足

 

などが挙げられます。

この要因によって、病的な虚実が生じることで、体の中で「邪正闘争」が繰り広げられます。「邪正闘争」は、すなわち漢方医学の免疫理論です。

 

各内臓で繰り広げられる、邪正闘争の現場を見極めて、胃腸の生理的な虚実のリズムを取り戻すことが疲労回復、そして自律神経症状カイゼンのポイントになります。

新陳代謝の正常化によって疲労回復力を向上させていく、これが漢方鍼灸の自律神経症状の対応の仕方です。

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