症例3 うつ病による7年間の引きこもり生活
患者:60代 男性 元小学校校長
初診日:2010年年9月29日
うつ病
何事にも興味がわかない、やる気が出ない。
日々の生活に楽しみ・面白味がない。
体が思う様に動かない自分自身を責めて、自己嫌悪に陥りやすい。
たまに7年前の出来事(既往歴~現病歴記載)を思い出す。
現在の心身の状態で生きていくことへの不安・辛さがある。
〇肩凝りや腰痛がここ4,5年ある。
〇不眠
〇食欲不振
〇便秘(ひどいときは約1週間)、たまに便が出るときは軟便から下痢
〇手足が冷えやすい
※解説イラストは表記上、裸モデルを使用していますが、実際は服を着用したまま、診察・施術を行っております。
大学卒業後、小学校の教員になる。
42歳~47歳 当時勤務していた、校長・教頭の勧めで、市の教育委員会に所属。
教育現場と異なる環境に加え、仕事量が増え、疲労が溜まりやすくなっていた。
仕事内容として、人事中心で、現場ほど、楽しく仕事が出来なかった。
この頃より、ビールの摂取量が増えてきた。
47歳~52歳 教頭として現場復帰。
現場に復帰したことで、以前より仕事にやりがいを感じられるようになった。
52歳 校長に昇進。
校長として人を束ねる困難さにぶつかり、悩み事が多かった。
更に、「子供がいじめられた」と苦情を訴えに来た両親への対応に苦悩した。
いじめの調査の中で、実態と違う苦情が含まれており、説明を聞き入れてもらえないばかりか、土下座を強要された。
53歳 うつ病発症の翌年の3月に校長を退職。
以来、心療内科を受診するも、様々な薬を処方されるも、
改善することなく、約7年間、家でほとんど寝ている生活をするようになる。(初診時には、4種の薬を服用)
<性格>
生真面目、几帳面、責任感が強い。感情を表に出さない方。奥さんには頑固とよく言われる(奥さんは、車で病院の送り迎えをしてくれるなど、精神的な支えになっている)。
【漢方医学的診断】
心肝気鬱、肝脾不和
【施術】
後谿・百会のうち一穴、ときに太白・公孫のうち一穴を合わせる、あるいは天枢一穴
漢方医学では、”心身一如(心と体は一体)”の観点から、どんな病気でも、問診と体表観察を重ね合わせて、心と体の状態の相関関係を把握していきます。
本患者さんの発症前のご職業は小学校の校長先生。
症状のきっかけとなったのは、校長になってから教員の先生方を束ねる困難さにぶつかっていたところに、約8年前にモンスターペアレントの再三のクレームに悩まされました。
それにより、うつ病を発症し、その翌年の3月に校長を退職されました。
それ以来、7年間、心療内科の受診以外、ほとんど家から出ないで、過ごすようになったとのことです。
そこで、問診と体表観察にて、「過度の思慮による心肝の気鬱と、それに伴う消化機能の低下」と診立て治療を行いました。
治療を行っていく中で、まず肩凝り、腰痛が楽になり、そして次第に朝起床しやすく、食欲が増していくなかで、約2ヶ月の治療で一進一退はあるものの、精神状態も徐々に改善していきました。
しかし、一番の問題は、3、4日に1回しか大便が出ない便秘。一時期、便秘がなかなか改善しないということで来院をお休みされたことがありました。
そこで病院で処方された便秘薬を服用したら、情緒面も改善するとのこと。
このことをヒントに、便が出やすくなる治療を施したところ、ほぼ自力で大便が出るようになり、それと共に精神症状も更に改善していきました。
本症例を通じて、大便排泄の状態と情緒面が密接に繋がっていることを改めて確認させていただきました。
鍼治療で、7年間止まっていた患者さんの人生の時計の針が再び動き出したことで、「今は、心に明るい日差しを取り戻し、とても気持ちよく毎日をすごすことが出来るようになっています」という、大変ありがたいお言葉を頂戴いたしました。
うつ病には投薬、カウンセリングといった対処法以外に、鍼灸治療による”体から心へのアプローチ”もあることを、一人でも多くの方に知っていただきたく思います。
※こちらに、本症例の患者さんの喜びの声を紹介させていただいています。
お電話ありがとうございます、
漢方鍼灸院 大阪市てんま吉祥堂でございます。