症例1 過労による喘息発作

症例1 過労による喘息発作

患者:男性 52歳 司法書士(自営)
初診日:2011年10月31日

<喘息発作発症の経緯と発症後の経過>

2011年7月1日 深夜2時頃、睡眠時に突然、息苦しくなり目覚めた。 首が締め付けられた様にな息苦しさで、救急車にて病院に搬送された。

救急車に乗っている間に、息苦しさは緩和していった。 病院でのレントゲン、心電図では異常を確認できなかったので、担当医師は経過観察するとのこと。

その10日後、同様の症状再発。耳鼻科での、声帯までの内視鏡検査と聴診器による診察で、気管支が収縮しているとの指摘を受けた。

後日、K医大付属病院で、気管支喘息と診断された。シムビコートを処方されるも、深夜の呼吸困難改善せず。昼間の歩行時も息苦しくなってきた。

8月5日 府内某鍼灸院受診。3か月ほぼ週2回受診。症状やや緩和するも、深夜の息苦しさは当院来院時には依然としてあるとのこと。

8月中旬 府内漢方専門医院を受診。
半夏瀉心湯で逆流性食道炎が緩和したものの喘息は不変。五虎湯で、やや緩和。

<増悪因子>
〇台風
〇高湿度
〇風呂上がり
〇食事量が多い時

<緩解因子>
〇乾いた場所
〇クーラーなど冷えた部屋にいる時
〇白濁の痰が出た後

〇首・肩・背中のこり
〇鼻根が重だるい

10歳 私学受験の塾通いで、勉強のストレスにより十二指腸潰瘍にな

35歳 司法書士取得。大きな取引先との仕事で、プレッシャーを感じやすかった。

30代後半 過敏性腸症候群。黒く、生臭い泥状便が出ていた。便が出るとスッキリする面と、時に腸に重だるさが残ることもあった。当時、辛いものを食べて、ストレスを発散させていた。また、30代後半より、司法書士の予備校講師を13年続けた。

38歳 結婚

45歳 網膜色素変性症で視野欠損のある母親を介護するようになった。この頃より、深夜、トイレに連れていくのに起こされるようになった

46、48歳 帯状疱疹(主に右背中と右腹部)

47歳 逆流性食道炎

【漢方医学的診断】
肝火犯肺、痰湿留肺

【治療】
胸郭内に停滞した熱や痰を排出する治療

本患者さんの喘息は、仕事のストレスやお母様の介護などが積み重なったことによる、持続的な過緊張に由来していました。

持続的な過緊張は、筋肉を固めます。特に、胸郭付近を走行する筋肉が固まってしまうと、まるで鎧をまとった様な状態になります。

また、胸郭内には、呼吸・循環器である肺と心臓が納められています。この二つの器官の働きが協力し合って、気血水のエネルギーが全身に運搬されます。

過緊張により筋肉が固まると、胸郭内から循環されるはずの気血水が巡りにくくなります。すると、次第に気が停滞し、熱化します。又、液体エネルギーである水も停滞し、ドロドロしてきます。これが、痰として気管支にへばりつきます。

こうして、肺の空気の出し入れ(新陳代謝)としての機能が阻害され、呼吸困難が生じます。これが、漢方医学的な視点からの、本患者さんの喘息発症に至るまでの、簡単な病理機序です。

治療では、胸郭内の新陳代謝がスムーズになる治療を徹底していきました。治療経過中、自営の仕事の疲労度やお母様の介護の状態によって、呼吸困難の頻度や程度は左右しました。

しかしながら、地道に先述の治療方針を続けていったところ、次第に首・肩・背中のこりが軽減していく共に、呼吸困難が少なくってきました。

私自身、長年、喘息発作に苦しんできただけに、喘息の各種症状に対する研究は力を入れております。一人でも多くの方が喘息症状の苦しさから解放されますよう、そのお手伝いをさせていただければと思います。

漢方鍼灸院 大阪市てんま吉祥堂