精神症状④ 邪正闘争

漢方鍼灸でのうつなど各種の精神症状の診立て方

漢方医学では、うつ症状やパニック障害など精神症状の処置をする際、まず、あなたの「アタマ・ココロ・カラダ」を動きを制限している状況を、次のように「正気(味方)VS邪気(敵)」の闘争の構図として捉えています。

現状維持か?挑戦か?

虚実は「疲れ」のモノサシ

この闘争に打ち勝つための戦略として、味方と敵の戦力比較が重要です。

味方の用兵が少なければ増やす

 

反対に、

敵の用兵が多ければ減らす

 

これらは、専門的に、前者を補法、後者を瀉法と表現します。

補法か瀉法、あるいは補瀉両用、漢方医学の戦術は、大きくいって、この3つだけです。

 

状況に応じて、適切に補法と瀉法を行うことで、この邪正闘争に打ち勝つ…のではなく、正気と邪気を和解するようにもっていきます。

 

この“正気と邪気の和解”という考え方は、気一元という哲学思想に由来します。

 

気一元とは、あらゆる存在は気を根源として繋がっている、という考え方です。

そこから、“邪正一如”、すなわち、正気も邪気も、元々は同じところから生まれたんだよ、ということです。

元々同じものだから、正気と邪気を和解させることとは、つまり元サヤの仲直りさせるようにもっていくことです。

 

それを現実化していくために、術者はこれから説明することを前提にして、まず邪正闘争の状況把握に努めます。

邪正闘争を把握する指標となるのが、エネルギーが不足しているのか、溜まっているのかということです。

前者を虚、後者を実と言います。

 

虚実とは、ここまで説明してきた、「疲れ」の程度を推し量るモノサシです。

この虚実について、後ほど、ご説明します。

精神症状で繰り広げられる葛藤とは

精神症状における邪正闘争とは、いわば、「アタマ・ココロ・カラダ」で繰り広げられている葛藤とも置き換えられます。

葛藤とは、葛と藤のつるが絡み合うかのように、同程度の2つの選択肢の間で迷っていることを言います。

 

精神症状の葛藤は、煎じ詰めると、「このまま動かないままでいたい」と「本心からやりたいことに挑戦したい」、いわば現状と理想のせめぎ合いです。

 

気持ちが、「現状維持」から「理想への挑戦」の方向に向かえば、精神症状の改善を、自分の側に手繰り寄せられます

 

この日が1日でも早く訪れるよう、漢方鍼灸の方では、虚か実かを指標に、精神症状の成り立ちを把握していきます。

虚とは…

エネルギー不足を専門的に「虚」と表現します。

こういった状況下では、多くはエネルギーを生成する脾胃に負担が生じています。

その負担が脾胃で持ちこたえられなくなると、エネルギーを貯蔵する腎の臓や精神状態を統括する心の臓にも影響が及んできます。

症状としては、

悲観的になりやすい、意欲低下、思考がまとまらない、恐怖感がつきまとう、動きたくない、不眠多夢など

といった症状が起きやすくなります。

実とは…

エネルギーの過剰を専門的に「実」と表現します。

内臓面において、肝の臓が過剰反応を起こしているケースが多く見られます。

 

筋肉を管理している肝の臓の過剰反応は、筋肉の過緊張として確認できます。

持続的な肝臓や筋肉の過緊張は、消化器の損傷や、心肺機能の興奮によるエネルギーの過剰循環に繋がります。

それにより、

動悸・呼吸困難・めまいなどのパニック様の発作、拒食あるいは過食嘔吐などの摂食障害、睡眠障害、慢性的な不安・過敏・緊張、肩や首のこり、頭痛など

が現れやすくなります。

実際には…

このエネルギーの虚と実、どちらに偏っているのかは、次の3つのステップの問診や体表観察で明らかにしていきます。