症例3 閉経前の子宮筋腫に伴う不正出血
患者:女性 50歳 主婦
初診日:2010年4月16日
子宮筋腫に伴う不正出血
<不正出血の発症から当院受診までの経緯>
2010年
3月15~22日 生理期間
3月27日 不正出血が始まる(量としては通常の生理の時の1日目程度で、やや少なめ)
3月30日 婦人科受診、内診にて子宮頚部に血が留まっているのではないかとのこと。
その後、子宮体・頚ガン検査
4月6日 検査結果にてガンの恐れはないものの、子宮筋腫発見(約1.8cm)
4月9日 不正出血を止めるために、担当医から子宮筋腫を切除するのを勧められるも、話し合いの結果、3ヶ月は様子をみることにした。
4月16日 当院初診
<生理の状態>
周期:約30日 期間は7~8日続く
色は赤から暗い赤(時に茶色に近い)
血塊は小豆大より小さなもので色は暗い赤
生理痛はほとんど無く、たまにある程度
〇肩・頚・背中のこりに伴う右手のシビレ
〇腰痛
〇動悸(不整脈)
〇めまい
〇全身が痒い
※解説イラストは表記上、裸モデルを使用していますが、実際は服を着用したまま、診察・施術を行っております。
23歳、24歳で長女・次女出産するも、29歳で夫に胃がんで先立たれる。
元々、胃が強い方ではないと自覚していて、胃に違和感を感じると、「自分も胃がんではないか」と不安になりがち。
30代半ばまでパートと子育てで大変だった。
38~43歳 人生で最も健康で、私生活も充実していた
45~46歳 生理が不規則になってきた
47歳 誕生日に、ガーンとする頭痛、回転性のめまいになる。
同時期、更年期様のホットフラッシュで、頭に汗をかきやすくなる。
<性格・精神状態>
性格:基本的に明るい方だが、時にマイナス思考に陥って不安を抱え込みやすい。
特に病気に関して敏感。
不正出血の原因が子宮筋腫であるから、切除することを担当医が簡単に勧めた態度に対する憤りと症状に対する不安。
更年期になった後の子宮筋腫は気にしなくてもいいと、母から言われるも、筋腫の切除をするか否か悩んでいる。
【漢方医学的診断】
不正出血に関して:肝鬱気滞血瘀
【施術】
施術方針は、「全身並びに子宮内の気血の循環改善」「不安感の軽減」。
経過はまとめを参照。
本患者さんは、症状に対して不安が強い様子でした。なので、施術前に、
「一般に、筋腫の大きさが1cm大になるのに、数ヶ月~1年前後かかるようです。
だから鍼治療をしたからといって、すぐには筋腫はなくりなりません。
不正出血の原因は子宮内の滞った血があふれ出ているものだから、量がそれほど多くなければ、それほど心配す
ることはありません。
筋腫と不正出血の直接的な原因である子宮内の血液の滞りを解消しましょう。
そうすれば、不正出血以外の肩・頚・背中の凝りに伴う右手のシビレ、腰痛、動悸、めまいも一緒に楽になって行きます」
と説明させていただきました。
すると、ご本人は大分安心され、鍼灸治療を開始する運びとなりました。
そこで、
「全身並びに子宮内の気血の循環改善」「不安感の軽減」
を治療方針として、鍼灸治療を行ったところ、治療2週目から徐々に出血量が減っていきました。
その後は生活状態に応じて、時々少量の出血があるものの、3ヶ月目に入ると、ほぼ無くなりました。
その間に、不正出血以外の諸症状も緩和していきました。
当院の子宮筋腫治療のスタンス
西洋医学では、子宮筋腫はエストロゲン依存性の疾患で、女性ホルモンの分泌量が減る閉経後には小さくなるとされております。
また、筋腫自体が悪性でなければ、こぶみたいなものだからという理由で、経過観察されることが多いようです。
患者さんへの説明に記載したように、筋腫が形成されるまでに一定の期間を要した訳なので、鍼治療をしたからといって、筋腫の成長を抑えられても、すぐに小さくなることはありません。
当院では、筋腫そのものを無くすという発想の治療を行いません。
筋腫に伴って出現しやすい、「不正出血、月経困難、生理痛、貧血」といった諸症状の状態を指標にしながら、子宮内の血流が悪くなるまでに至った、全身の気血の循環を改善することを重視します。
体質改善していくうちに、自然と生理関連の諸症状が軽減していきます。
その過程で、次第に筋腫も徐々に小さくなることがありますが、これを目的に治療は行わないことだけを、再度お断りさせていただきます。
「筋腫=悪」という図式の発想を持っていますと、不安が付きまといやすくなります。
それより、筋腫といかに共存しながら楽に生活していけるか、といった考えに切り換えることをお勧めします。
「頭では分かるけど、なかなか…」という言葉が聞こえてきそうです。
体が辛いときは、考え方を切り替えることはなかなか簡単ではありません。
不安をなかなか拭えないようでしたら、それでも構いません。
まず、お体の状態が楽になるよう、そのお手伝いさせていただきます。
※こちらに、本症例の患者さんの喜びの声を紹介させていただいています。
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