アトピー・蕁麻疹改善の症例報告 症例2 20年続いたアトピー症状の改善

症例2 小学校入学前からの20年以上続くアトピー症状

患者:28歳 女性 兼業主婦

初診日:2010年4月17日

アトピー性皮膚炎

<経過>
小学校入学前後に出始めた。

小学校3,4年が一番ひどく、特に肘の皮膚の炎症がきつかった。

中高生時に治まった。顔や唇には若干出ていた。

 

<現状>
アトピー再発の経過は、<既往歴~現病歴>参照。

痒み・発疹が顔、首から前は鎖骨下で後ろは背中、肘・膝、お腹に現れる。

手の届く部位を掻くと、湿疹部位が悪化する。

手が届かない背中は痒み・湿疹が出ても、元の状態に戻りやすい。

 

<増悪因子>
〇生理前(排卵時)

〇睡眠中、体が温もってきたら(特に首、脇が痒くなる)

〇興奮した時

〇仕事から帰ってホッとしている時

〇季節の変わり目

 

<緩解因子>
風呂上がりに保湿クリームを塗った後

〇首・肩のこり。

〇夕方疲れやすい。

〇以前は、28~30日型の生理周期が、死産後、40日前後になり、2日目以降の出血量が激減している。

〇痒みで熟睡しにくい。

※解説イラストは表記上、裸モデルを使用していますが、実際は服を着用したまま、診察・治療を行っております。

幼少期

特に健康上問題なく元気に過ごしていた。

両親が離婚し、小学校入学までに、実母・実母側の祖父母、実父側の祖父母の家を転々として生活していた。

 

小学校

小学校入学前後にアトピー発症

入学と同時に、実父と継母と同居し始める。

 

3・4年生 家庭内がもめていて、父との関係が最も悪かった時期。

また、当時、食生活は揚げ物や肉系が多かった。

 

5年生 父方の祖母と暮らし始め、精神的にかなり落ち着いていった。

生活習慣が規則正しくなり、食生活も和食中心になった。

それと共にアトピーも緩解していった

以降、就職するまでアトピーは緩解していた。

 

高校1年生 初潮

高校2年生 本人の希望で父親と再び暮らすようになる。

父親との関係性は小学生の時ほど悪くなかった。

食生活が、揚げ物や肉系が増えた。

 

18歳 経理事務の職に就く。職場の人間関係上のストレスがあった。

この時期から、唇だけアトピーが現れる。

 

20歳 一人暮らしを始めた頃から、顔中心にニキビが現れた。肩こりを感じやすくなった。

この時期に身長が5㎝伸びた。

23歳 退職

24歳 結婚

 

26歳 妊娠しないので、婦人科を受診したところ、多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)と診断され、排卵誘発の薬を処方された。

毎回ではないが、無排卵の時もあった。その後、まもなく妊娠した。

 

妊娠当初からつわりがきつく食べ物を受け付けなかった。

常にミゾオチが気持ち悪く寝込みがちだった。唯一受け付けたのがサイダーで、がぶ飲みすると、スッとしていた。

 

妊娠3カ月目で体重が45㎏から39㎏(身長155㎝)に落ちた。

つわりは4カ月目から緩和してから、普通に食事を摂れるようになり、また家事もできるようになった。

 

妊娠5~6カ月目でアトピーが顔を中心に悪化。

胎児は標準に育っていたのにもかかわらず、妊娠7カ月で死産(原因不明)。

胎内で胎児の心音が聞こえなくなった為に、陣痛促進剤で胎児を胎外へ出した。

 

その後、数日間、力が入りずらかった。

初めての妊娠で死産は、精神的なショックが大きかった。

死産後、更にアトピーが悪化し、体も疲れやすくなった

体重は元の45㎏に戻った。

 

27歳4月 アトピーが顔から全身に広がり、背中・首回りにも出てきた。

ステロイド剤を止めようと思って、エステの光療法(紫外線を照射)を3か月続けた。

その間、完全に脱ステロイドをしたが、リバウンドの影響で皮膚の乾燥が全身火傷の様に広がった。

皮膚がボロボロと鱗屑状になり、衣服に触れるだけで痛かった。

精神的ショックによる食欲低下で、体重が39㎏に落ちた。

 

7月 皮膚科受診。

きつめのステロイド剤を塗布したことで、全身の痒み症状が治まり、徐々に現状態になった。症状が治まったことで気分的に楽になり、食欲が増え元の体重に戻った。

 

<精神状態>
痒みと生理周期に伴い、不安やイライラなど、感情がたかぶりやすい(PMS症状)。

【漢方医学的診断】
腎虚、肝鬱気滞化火⇒血熱・内風

【施術】
生理前後やパートでの疲労度によって虚実が変化するため、四診合参により、補腎による滋陰清熱を中心としながら、適宜疏肝理気を行った。

「既往歴~現病歴」から明らかなように、本患者さんは、人生で数々の苦難を味わってこられました。

実際は、ここに記載された以上の苦しい想いをされてきたことでしょう。

その苦難によって生じた精神的葛藤が、今回のアトピー性皮膚炎と大いに関係しています。

 

一般に、過度な精神的葛藤が長期に渡ると、肝気の停滞から熱化、次第にその熱が血管内に流れる「血(けつ)」に波及します。これを、専門的に「血熱(けつねつ)」と言います。

血熱が、皮下の毛細血管に流れると、皮膚に炎症症状が起きやすくなります。

これは、アトピーに限らず、様々な皮膚の炎症発生パターンの一つです。

 

また、本患者さんは初潮年齢が16歳と遅かったことは、注目に値します。この初潮の遅れは、発育・成長に密接に関係する腎気の不足である腎虚によるものか、あるいは肝の臓が腎の臓を働きを抑えていたのか定かではありません。

恐らく、20歳で1人暮らしして解放感を得たためか、身長が5㎝伸びたことから、後者の方が可能性が高いものと思われます。

 

奮起・注意・緊張など人の行動時に活発に働く肝気を、下から土台として支えているのが、腎気です。

腎気が十分蓄えられている時は、肝気が暴発することなく人は行動できます。

 

しかし腎気のはたらきを抑えつけるほど肝気がたかぶると、人は興奮しやすくなります。

そこで、治療初期では、肝気を処理する施術を優先して行いました。

しかし、1カ月半ほど、なかなか症状が緩解しませんでした。

 

そこで、改めてカルテを見直し、産後の流産の情報に着目。そして体の反応をみたところ、腎虚の反応を確認したことで、方針を補腎をしながら肝気を引き下げる施術に切り替えました。

すると、症状の一進一退あったものの、イライラや不安感が落ち着いていくと共に、次第に痒みや炎症の程度が軽減していきました。

 

更に嬉しいことに、地道に腎気を補う治療を進めてきた甲斐もあって、念願の妊娠と出産の報告をくださいました。

本患者さんの治療は、私にとって、鍼灸治療の可能性を大いに感じさせていただいた、非常に印象に残っている症例の一つです。

こちらに、本症例の患者さんの喜びの声を紹介させていただいています。

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