症例5 物心ついた頃からの倦怠感
患者:30代 男性 公務員
初診日:2011年6月13日
倦怠感が1日中あり、ものごとをやり始めるのに時間がかかる。
30歳、過ぎてから、雨やくもりの日のだるさが悪化していった。
寝起きが悪く、起床してから30~60分後に、やっと行動に移せることができる。
<倦怠感の増悪因子>
くもり、雨、春先、季節の変わり目、朝
<倦怠感の緩解因子>
・リズム良く仕事をしている感覚がある時(=気分が乗っている時)
・クラリネットの演奏中、楽器との波長が合った時(心地よい震動の真ん中にいるのを感じる)
・お風呂で発汗出来たとき(逆に発汗出来なければ不変)
〇首・肩のこり(左>右)
〇ここ5,6年の手のほてり(以前は冷え性)
〇ここ1年、動悸が突発的に起きる
※解説イラストは表記上、裸モデルを使用していますが、実際は服を着用したまま、診察・施術を行っております。
母親のしつけがかなり厳し過ぎかった。そのため母親で甘えたことがほとんどなく、本音で会話をした覚えがない。
一方、父親は仕事が忙しく、子育てに無関心で、父との関係性が希薄な幼少期を過ごした(学校の行事に来てくれることが一切無かった)。
こういった家庭環境の中で育ったせいかで、自分自身の感情を表現することが苦手だった。
ものごころをついた頃から、何らかのストレスが溜まっていた様に思うが、ストレスと倦怠感の関連は、本人曰くよく覚えていないとのこと。
5歳 水槽のガラスで、左示指が切れそうになった。以来、示指第2・3関節の痺れが時々出てくる。
小学校 6年間、ソフトボールをしていた。周りに、「クズ」「ノロマ」とよく言われていた覚えがある。この当時から、体の怠さを感じていた。
15歳 虫垂炎
16歳 自然気胸
大学卒業後、官庁関連の勤務。先輩上司からの指示を信用できるものではなかった為、仕事は自分で覚えていった。
27歳 結婚
<人間関係>
職場の先輩、夫婦関係共にあまりうまくいっていない。
<趣味>
高校時代から続けている吹奏楽(クラリネット)で、毎週末、練習に出かけている。
⇒このことで奥さんから、よく文句を言われる。
【漢方医学的診断】
肝鬱気滞
【施術】
百会、後谿、申脈穴から一穴
「慢性疲労症候群」は、全身を動かしがたいほどの倦怠感や疲労感が長期間に及ぶ原因不明の病気とされています。
本患者さんの「物心ついた頃から」という長期間に及ぶ疲労感は、緩解因子の様子から、「慢性疲労症候群」ではなく、いわゆる「慢性疲労」の範疇です。
ただ、問診での「物心ついた頃から」という表現に、一つの違和感を覚えました。
問診では、患者さんが症状について話される言葉を頼りにして、症状の原因を探ります。
しかし、症状について極端に表現された場合、術者はその表現を額面通りに受け取り難いことがあります。
そんなときほど、往々にして症状と、背後にその方が歩んできた人生が密接に絡んでいます。
一般に、陽体である子供は、活動エネルギーに溢れていてます。
だから、疲れても、寝れば回復し、「慢性疲労」というほど疲れを溜め込むことは、なかなかありえません。
あるとすれば、顕著な内臓の弱りによるエネルギー不足か、何らかの心理的負担を感じ続けていたかのどちらかです。
では、何故、本患者さんは、ご自身の疲労感を、「物心ついた頃から」と表現したのでしょうか?それは、<既往歴~現病歴>記載にある、幼少期の家庭環境が影響しているようでした。
【この方の症状の裏には…】
心が満たされていれば、人間の活動エネルギーである気は伸びやかに巡ります。
逆に、我慢・不満・不安など心の負担を、一定期間、抱え続けていると、気の巡りを管理する肝臓に負担が及び、気の流れが停滞します。
この気の停滞は体のだるさを感じさせる要因になります。
ご本人曰く、両親との愛情関係が希薄な家庭環境で育ち、感情を表に出すことに苦手意識がありました。
そのため、家庭では想ったことを心の内に溜め込みがちになり、鬱積する幼少期を過ごしてきたそうです。
恐らく、そういった環境が影響して、「物心ついた頃からの倦怠感」と表現されたのでしょう。
それでも、高校時代にクラリネットという自分自身を表現できるものに出合ったことは、本患者さんにとって、大きな救いでした。
事実、リズムや音といった音楽的要素によって、自分自身の倦怠感が緩和するのが実感できているのですから。
以上のことから、本患者さんの倦怠感の要因を、「満たされない想いを感じ続けたことによる、気の停滞」と診断しました。
すると週1回の施術で、1ヶ月ほどで倦怠感が徐々に軽減し、結果として順調に改善しました。
※こちらに、本症例の患者さんの喜びの声を紹介させていただいています。
メンタルから自律神経が乱れたときの真の解決策とはについて詳しくはこちら
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