症例1 めまい、過呼吸、後頭部痛

自律神経症状改善の症例報告

症例1 めまい、過呼吸、後頭部痛

患者:30歳 女性 教員

初診日:2012年2月17日

①めまい
2011年9月より発症。左右に揺れる

立位で起こることが多く、左右に頭が揺れる感じ。

午前中(起床時や出勤時)、週末などが多い。

②過呼吸
「既往歴~現病歴」参照

③後頭部痛(右>左)
めまいと同時期に発症。入浴で緩解。

〇9月~12月まで食欲不振
その時期の記憶があまり無く、家族に「よく疲れた」とこぼしていたらしい

〇全身の倦怠感

〇気分の浮き沈みが激しく、イライラする。

※解説イラストは表記上、裸モデルを使用していますが、実際は服を着用したまま、診察・施術を行っております。

24歳で大学院を卒業後、女子高の教員となる。

27歳(’09)で共学の高校へ契約教師として採用される。

男子生徒にも指導するということで、以前より気が張るようになった。

また勤務時間が以前の学校より長くなった。

正式採用されるよう、2年間生徒指導に関してかなり努力した。

採用試験に受かるよう、かなり勉強した。

今思うとかなり無理していた2年間だった。

29歳(’11年) 教員として正式採用。

この年から担任を任される。

男性の学年主任のチェックの目が厳しく、それをかなり気にしながら勤務していた。

同年8月に部活の顧問を任され、夏休み合宿に一週間帯同。

同年9月に、先輩教員とのトラブルがあり、

その腹いせか、生徒指導のことで厳しく叱られることが度々あった。

同時期に食欲が無くなり、熟睡感も減ってきた。

同年12月 職員室で過呼吸になる。

職場カウンセラーより心療内科を紹介され、自律神経失調症と診断を受ける。

<性格>
気にしい。

他人が注意されているのを、傍で聞いていても、自分のことのように受け止めがち。

人の言葉に敏感に反応しやすい。

<精神状態>
仕事に対してやりがいを感じている。

生徒の成績に関して学年主任のチェックがあり、プレッシャーを感じる。

<職場環境>
仕事にやりがいを感じているが、様々なプレッシャーを感じる。

勤務時間が午前8時から午後8時で、週1回しか休みが無い。

【漢方医学的診断】
○めまい・後頭部痛
肝うつ気滞⇒頭部における胆経の左右の気血の流通のアンバランス

○過呼吸
肝うつ気滞化火⇒心肝火旺

【施術】
後谿、申脉、足臨泣、百会から1穴のみで徐々にめまい軽減し、7診目でほとんど無くなり、9診目の4月5日で治療完了。

既往歴~現病歴から明らかなように、本症例は、職場での過度なプレッシャーやストレスが積み重なり、心身ともにキャパシティーオーバーとなったことによる自律神経失調症の諸症状でした。

自律神経失調症の多くは、家庭・地域・職場といった人間関係、あるいは季節や気象も含めて、外部環境に対する適応力が低下に起因しています。

こんなとき、たいてい、心身ともに余裕がありません。

心身ともに余裕がないときは、一つでも負担になっている対象を軽減していくことが最優先です。

漢方鍼灸では、まず体内の内部環境を整えることで、体の負担を軽減させます。

体の負担が軽減されると、次第に心の余裕が生じやすくなります。

本患者さんの場合、問診での様子から、ご自身の負担となっている対象や要因を理解されていたことが伺えました。

また、職場の方の理解により業務負担を抑えられたことも、比較的早期に鍼の施術効果が出やすい要因でした。

自律神経失調症に限らず、どんな病も、自分と外部環境が折り合いがつかないからこそ生じるものことが多い。

特に、自律神経失調症で悩まれている方の多くは、様々な葛藤の中で、自分の弱さと向かわざろうえない場面に出くわしていることでしょう。

それは、術者である私も同様です。

一本の鍼で、患者さんが段々と元気になっていくお姿を見られるときは、逆に私の方が勇気をいただきます。

そんな場面に沢山出あいたい、ただ素直にそう思って鍼を握らせていただいています。

漢方鍼灸院 大阪市てんま吉祥堂